第2話
表具師
私の仕事は、表具という仕事ですが、その内容は 掛軸・屏風・額・襖などを新しく作ったり、古くなった物を修復してまたその先数十年、鑑賞出来るようにする仕事です。
言い方も、表具・表装・経師などいくつかありますが、やはり私は、具を使用した者(絵の具・墨などで書かれた作品を仕上げる)と言う意味の表具と言ういい方が一番あってるかと思います。
何の仕事であってもそれを習得するにはそれなりの、勉強と経験がひつようかと思います。今は、専門の学校・本がありまして、独学で学んでられるかたも多いようですが、私たちの時代は、弟子に行くと言う形が多かったです。
その教え方も具体的に、一つ一つ教えるのではなく、長い時間をかけて体得させるというやり方です。ですから良いお店程すぐに役たたせようとはしないで、一見無駄に思えるような事(しかし実はこれが後で役に立つ)を延々とさせる。やらせられる側はこんなんで給料頂いていいのかしらんと思う。
作業に関しては、お客様の作品をやらせていただいたのは、3年程してからだった様に思います。
営業に関しては、社長のお供で車の中で色々話を、聞いたり、向かった先で、お客様と話してるのをその横でチョコンと座って聞いていたり、そういう事で体感として教えていただいたみたいです。
今思えば、覚える側よりも教える側の方が忍耐いっただろうなと思います。そしてそういう中で表具師としての見る目の様な者が、少しずつ芽をだしてくる訳です。
私の仕事は衣食住から少し離れてまして、どなたからでも必要とされる様な者ではありませんが、それを好まれる道の方からは、大変喜ばれたりもします。いつの間にやら30年過ぎましたが、出きるだけ長く一つの仕事のみでまっとう出来たらいいかなと思っています。
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